2020/07/03 14:00
『コーヒーが冷めないうちに』 川口俊和 著 サンマーク出版 2005

2018年に映画化された文芸作品。喫茶店フニクリフニクラは望んだ時間に移動できるという都市伝説を持ち、その不思議なお店で起きた4つの奇跡の物語が描かている。
物語のなかでお店で使われているコーヒー豆に関する描写があり、それはモカであった。「エチオピア産の非常に香りのいい豆が使われている。半面、酸味が強く、クセもあるので敬遠する人もいるのだが(マスターである)流のこだわりでこの店ではモカしか扱っていない」とある。おそらくは浅煎りから中煎りのものではないか、と推測される。本文ではホットコーヒーのみならずアイスコーヒーの描写もあるので、モカしか扱っていないといわれると焙煎度を異にしたものもまた用意しているだろうということも感じられ興味深く想像を巡らせることができる。物語中盤では「コーヒーといわれれば基本的にモカを出す」との記述もあるので他のコーヒーもあるのかもしれないが、アイスコーヒーのことも考えられるし、常連のみに許された裏メニューではないかと想像するのもまた本を読む楽しみの一つである。
珈琲を営むものとして、このモカの正体を考えてみる。
ヒントの一つはエチオピア産ということだ。モカはエチオピア産とイエメン産がある。モカという言葉はイエメンにあった貿易港の名前でそこで取り扱われていたコーヒーの総称をいつしかモカと呼ぶようになった。エチオピアはコーヒーの起源がある地でもあり、コーヒーという名前もエチオピアにあるカッファという地から名づけられたという説もある。
エチオピア産のコーヒーは、東部のハラー、西部のジンマ、南部のシダモが有名で非水洗式(ナチュラル)製法で作られている。またイルガチャフィという村では水洗式(ウォシュト)製法で作られている。用水確保や設備管理上の問題などが長年ナチュラルを作っていることと関係している。
別のヒントとしてモカのみでアイスコーヒーまで賄っていると仮定すると、先日このブログでも紹介した「モカ・ナチュラルのアイスコーヒー」のようにナチュラル豆を使っているのではないかと推測される。酸味強く、クセもあるとの描写とも一致する。地域としてはイルガチャフィでも2013年ごろからはナチュラル製法の豆が取り扱われるようになってきたこともあり、なかなか特定できない。
モカの深煎りと浅煎りのブレンドを使っているか、アイス用は少し苦みを感じられるようにしているかと想像される。それならばモカのみでもかなり面白いものだ。
いずれの場合にせよ、モカ香といわれる独特の香りが漂うことは間違いない。
「フニクリフニクラ」という不思議な喫茶店には、魅惑のモカ・ナチュラルがよく似合う。
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当店での取り扱い
モカ・イルガチャフィ
レモンのようなさっぱりした香りが魅力のモカ。
モカ・コチャレ・ナチュラル
モカ香をたっぷりと楽しめるナチュラルのモカ。アイスコーヒーとしても楽しめる。
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