2020/09/14 16:02
『リバース』 湊かなえ・著 講談社 2015.5
当代の人気作家で本作をはじめ、映像化された作品も多々ある。
読んだ後に嫌な感じになるミステリー、「イヤミス」という言葉とともに並ぶ作品群にファンも多い。

書架にある本書に何気なく手を伸ばしたのは、間違いなくコーヒーを連想させるような表紙のデザインだ。白地に描かれた黒い楕円の羅列。本棚に並ぶ背表紙の中である種異質だった。その背表紙にある18の楕円のうち2つに白い溝がある。珈琲豆にあるセンターカットであることはいうまでもないだろう。その認識だけで私の読書対象となった。
厳密にいえばコーヒー豆は決して黒くはない。イメージとしての黒だ。珈琲の歴史を紐解いてみると、イスラム社会ではコーランで炭を食することを禁止していたことから珈琲に異を唱えていた人たちはこの点を論拠にコーヒー禁止を求めていたという。17世紀になりアハマッド1世のもと、宗教的権威者たちが「コーヒー豆は炭と呼ばなければならないほど強度には焼かれていない」という統一見解がまとめられ、ようやくイスラム社会において珈琲が公的認知を受けたという歴史がある。
それはそれとして、黒い楕円に白のセンターカットを見ればコーヒー業界人ならずともコーヒー豆を認知することはたやすいことであると思う。この形状は紛れもないシンボルであるということができよう。もちろん裏返しになればセンターカットが見えなくはなるがそれが混じることで一層コーヒー感が増してくるかとさえ思われる。
作中でも焙煎店の描写、産地のみならず「南国の花、ピーチの香り」「メロン、マンゴーの風味」との描写やペーパー、ネル、プレス、エスプレッソマシーンといった言葉までコーヒーに関係するものが多い。主人公はそこに勤めているわけではないのだが、それだけに濃密な描写であるともいえる。小説内でスペシャルティコーヒーという言葉を初めて見たような気がした。